今の職場でパートの事務職として働いて15年になる。場所は名古屋市営地下鉄東山線伏見駅すぐ近く。伏見は、高層ビルが並ぶ名駅と繁華街である栄の中間にある、オフィスビルが立ち並ぶビジネス街だ。
仕事にも職場の人間関係にも大きな問題はなく、お気楽なパートのおばさん生活を送っている私が日々心を悩ませている問題…「お昼どうしよう?」
昼休みは12時から13時の1時間。職場には私と同年代のパートの女性が多くいて、その大半は弁当を持参して、職場で食べている。コロナ前は会議室などで三々五々、グループになっておしゃべりしながら食べていた。私は、かつて高校生だった息子から「コンビニの弁当を買わせてください」とお願いされたぐらい、弁当作りのまずさには定評があるし、グループでおしゃべりするのも苦手。かといって、それほど広くない会議室の隅でどのグループにも入らずにひっそりコンビニ弁当などを食べていると何か偏屈な人と思われそうで居心地が悪い。
というわけで、多少の出費は覚悟して、ランチは職場近辺の店で外食することにした。コロナ以降は個食が推奨されて、各自のデスクで弁当を食べるようになり、グループでのお弁当会は無くなったけれど、私はランチ外食の習慣から抜けられず今に至る。ランチぐらいは職場から離れて気分転換したいし。
幸い、職場の周りはオフィス街だけあって、飲食店はたくさんある。和・洋・中はもちろんのこと、インド・タイ・韓国料理もあるし、居酒屋も、昔ながらの喫茶店も、ちょっとおしゃれなカフェもある。ランチの値段は最近値上がりしていて、今は1,000円~1,200円が相場といったところ。どの店に入るかは重大な問題。何せ昼休みは1時間しかない。しかも一般的にお昼休みは12時から13時という会社が多いので、伏見近辺の飲食店はこの1時間だけが異常に混雑するのだ。
もし、人気の店に行って満席の場合、その近くの店に入れたらいいけど、出足が遅れた分、近くの店も満席になってしまい、ランチ難民になってしまう可能性も…それなら人気店は最初から諦めて、安全パイを狙うか…などという葛藤が頭の中でぐるぐると巡ることになる。地元テレビの情報番組で取り上げられた店はまず入れないので、2か月は様子見。あと、満席であっても、店内の客の男女比を見て、男性の比率、特に中年男性の比率が高ければ、多少並んでいても少し待てば入れる可能性が高い。逆に女性の比率が高い場合はさっさと諦めるべし。
たまには外食したいという友達や、私と同様の外食志向の人と一緒にランチに行くこともある。そういう時にはまず「どこに行く?」「どこかいい所知ってる?」という探り合いから始まる。大抵の場合「どこでもいいよ」「あんまりいい所、ないよね」で1ラウンド終了。次に「昨日、何食べた?」「今日の夕食、何食べるの?」と、除外品目を特定。
「そういえば、この間できたあのお店、行った?」と相手の出方を探る。そうしているうちに何となく「あそこにしようか」となっていくのだけど、それでも決まらない時には「そういえばヤマダさん、今日はシューマイ弁当持って来たって言ってた」と、他人の弁当情報まで持ち出すことも。そして、大抵の場合、近所の無難ですぐに入れそうな店に決着する。
無事店に入れても、安心はできない。メニューを決定、素早く注文。それでも料理がなかなか運ばれて来ないと不安になる。タイムリミットは12時半。それを過ぎると店員に催促。それでもさらに10分ぐらい待たされることもある。食事を終り、会計をして、職場に戻って、トイレで簡単に歯磨きや化粧直しをして、13時までにデスクに着席しなくてはいけない。おかげでこの15年間で相当な早食いになってしまった。
毎日毎日、平日の昼はいつもこんな調子で過ごしている。コロナ禍の時、ほとんどの店が休業している中でも営業している店を探し、何とか乗り切った。コロナで閉店してしまった店も多かったけど、新しい店もできてきている。街に活気が戻ってきて、昼時の賑わいが増している。私の昼のモンダイはなかなか解決しそうにない。